映画通によるクロス・レビュー!

REVIEW 1

惚れ惚れするほど恐ろしい“リメイク犯罪”に驚愕せよ!
高橋諭治(映画ライター)

純真な少年時代にホラー、スリラーものを見過ぎて人生を踏み外した映画ライター。「毎日新聞」「ゲーテ」や「映画.com」などのウェブサイトで映画評を執筆中。

今に始まったことではないが、ハリウッドではシリーズものとリメイクが絶え間なく作られている。すでに『ハロウィン』『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』がリメイクされたのだから、そろそろ『スクリーム』がリメイク・ネタ探しの俎上に載せられても不思議ではない。いっそのことスタッフ&キャストを一新してグッと若返らせ、『スクリーム:ネクスト・ジェネレーション』なんて題名にしてはどうか?
という冗談のような企画が本当に実現しかねないハリウッドから届いた驚くべき最新作、それが『スクリーム“4”:ネクスト・ジェネレーション』である。監督のウェス・クレイヴン以下、前3作を世に送り出したスタッフ&主要キャストがまさかの勢揃い。しかも今回の犯人が大胆不敵にも引き起こすのは、第1作のウッズボロー連続殺人事件を再現した“リメイク犯罪”だ。これはまさしく「『スクリーム』のリメイク権を売ってくれ!」と群がる他の映画会社に対する作り手たちの返答と言えよう。せっせとリメイクに勤しむハリウッドの風潮をまんまと逆手にとり、劇中の登場人物に“リメイクのルール”までしゃべらせるのだから、このシリーズ特有の批評&パロディー精神はますます冴え渡っている。
また昨今のホラー映画は刺激性を追求するあまり殺人シーンのギミックに凝る傾向が著しいが、『スクリーム』シリーズの歴代犯人たちは一貫してナイフを使う。リメイク犯罪を志向する今回の犯人も基本的にはコピーキャットなので、やはりナイフをふりかざしたシンプルな凶行を連発する。殺しの標的に“ホラー映画クイズ”を投げかけたかと思えば、ナイフを手にして唐突に襲いかかり、理不尽な追いかけっこを繰り広げる。今回の犯人の暴走ぶりはそうとう過激で荒っぽいが、『ソウ』シリーズのようにバイオレンスそのものを売り物にはしていない。頑ななまでにシリーズの“ルール”に則った節度あるショック描写が、妙に懐かしくもあり、今観ると逆に新鮮なのだ。
そしてバイオレンス・マスターならぬストーリーテラーとしてのウェス・クレイヴン監督の手腕がきらりと光るこのシリーズは、ミステリー映画としても一級の面白さを提供してくれることを忘れてはならない。ヒロインのシドニー・プレスコットがついに絶体絶命の窮地に陥ったそのとき、意外な犯人が意外な動機をまくし立て、いかれた本性を露わにするのがシリーズの“ルール”でもある。
むろん、ここで真犯人を名指しするわけにはいかないが、クライマックスにはシリーズ最大のサプライズが待ち受けている。おまけにその犯人は単なる“リメイク犯罪”では飽きたらず、とてつもない野望をぶち上げる。そう、単なる焼き直しのリメイクなんて意味がない。そんな作り手たちの意欲とプライドが乗り移った『4』の犯人は、あらゆる観客がうっとりと惚れ惚れするほど恐ろしいのだ!

REVIEW 2

意味深な“リメイク犯罪”が魅力の『スクリーム4』
鷲巣義明(映画文筆家)

雑誌「映画秘宝」「宇宙船」「SFマガジン」、映画パンフレット、書籍等に執筆。主な著書に「ホラーの逆襲/ジョン・カーペンターと絶対恐怖監督たち」「映画秘宝ディレクターズ・ファイル/ジョン・カーペンター 恐怖の倫理」ほかがある。

『スクリーム4』を映画宣伝のキャッチ風にあおれば、シリーズ同様の魅力の他に“新たな3大見せ場”が用意されているぞ、となる。
物語はシドニーが自叙伝「闇の外へ(OUT OF THE DARKNESS)」を上梓して帰郷して始まる。『スクリーム』3部作が綺麗に幕を閉じていたが、死者が約40名にもおよぶ連続殺人事件に巻き込まれてしまったシドニーからすれば、そうやすやすとぬぐいきれるものではなかった、というのが実感であろう。と同時に、10数年前にウッズボローで多感な時期を過ごしていた次世代にも、その惨劇はなんらかの影響を及ぼしていたことになる。これが、新旧世代を絡めた4作目の魅力<その1>になる。
1作目の殺人事件と酷似したようなリメイク犯罪が相次ぎ、ゲイルが犯人像を推測した。「リメイクはオリジナルを越えたいの?」と言っているように、殺人犯はシドニーとウッズボローに対し挑戦的である。ホラー映画を考察する若者たちが登場するホラー映画というメタフィクション構造は今回も同じだが、今まで以上に眩惑的だ。それでいて、シドニーが最後の最後で「オリジナルを改悪しちゃダメ」と言うように、オリジナル版の世界観を尊重するかのようなムードを作品全体から放つ。それに呼応するかのように、シドニーは過去に強引に引き戻されてしまったかのように表情を曇らせ、ゲイルはかつてのように野心をギラつかせて傲慢さを露わにして生き生きしてくる。かくして『スクリーム』は復活するわけだが、それを取り巻く時代だけは取り戻せない。そのために1作目(オリジナル版)とは異なる展開を迎え、それが魅力<その2>となる。
『スクリーム2』ではホラー映画の続編のありように触れていたが、本作はあくまで“リメイク”がテーマ。ネタばれになるので核心にストレートに触れられないが、犯人自身はリメイク狙い……とはいえ二番煎じではなく、あくまでオリジナル超えの超リメイク的存在になろうとする。曖昧な表現になって申し訳ないが、『スクリーム4』を観れば“なるほど”と納得するはずだ。ここが魅力<その3>で最大の見せ場になる。
シドニーは、4作目の避けては通れない試練を経て、ようやく真の「闇の外へ」と脱け出すことができるのかもしれない。その陰には現代のネット社会が生んだ醜悪な風潮が投影されていて、クレイヴン監督らしい主張を感じさせる。

REVIEW 3

王の帰還 ~11年間のホラー潮流を呑み込む『スクリーム4』~
尾崎一男(おざき かずお)

映画評論家&ライター。「映画秘宝」「チャンピオンRED」「フィギュア王」などに寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントでも活躍中。日本映像学会(JASIAS)会員

「『スクリーム』の登場によって、ホラー映画の大半は皮肉っぽい調子になってしまった。だから僕は純度100パーセントのホラーを撮ろうと思ったんだ」
これは今年日本公開されたモンスターパニック映画『ピラニア3D』の監督、アレクサンドル・アジャの言葉だ。彼は殺人鬼と女子大生が死闘を繰り広げるホラーデビュー作『ハイテンシション』(04年)の日本公開時「なぜこんな残酷な作品を撮ったのか?」という筆者のインタビューに、ためらうことなくこう答えたのだ。
『スクリーム』シリーズは究極の殺人映画だ。いや、劇中で殺人鬼が暴れるからそう呼ぶのではない、ホラー映画というジャンル“そのもの”を殺してしまった作品なのだ。
アメリカのホラー映画は『エクソシスト』(73年)や『悪魔のいけにえ』(74年)などの名作を生んだ1970年代の黄金期を経て、80年代には流血描写を極めたスプラッター・ムービーの台頭へと到っていく。だが90年代、『スクリーム』(96年)は、そうしたホラーやスラッシュ映画の文法やメカニズムを自己言及する[メタ・ホラー]の意匠でもって、ストロング・スタイルのホラーに引導を渡してしまったのである。
今回11年ぶりに甦った『スクリーム4』は、そういう意味で興味深いシリーズ復活といえるだろう。なぜなら『スクリーム』以降のホラー映画の世界には、この11年間で大きなムーブメントの“うねり”があったからだ。そのひとつは血やヴァイオレンスを見せることへの、前のめりな描写姿勢を持った「スプラッタ・パック(血まみれ新世代)」の台頭だ。先に触れたアレクサンドル・アジャや『ホステル』(06年)のイーライ・ロスといった新生たちが、『スクリーム』が指摘した既存のホラーやスプラッタ映画のルーティンをかわし、残酷描写をひたすらに極めたホラーの方向性を打ち出したのだ。
スプラッタ・パックは他にも、絵づくりの才人であるCMディレクターや、MTV世代の若きビジュアリストからも輩出された。『悪魔の棲む家』(02年)や『エルム街の悪夢』(10年)リメイクをプロデュースしたマイケル・ベイ(『アルマゲドン』『トランスフォーマー』シリーズ監督)は、ホラー映画が興行的に成功させやすいことから同ジャンルの製作へと着手し、新人監督が演出スキルをつける試験場としてホラージャンルを有効活用した。その結果『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04年)のザック・スナイダーなど、若き才能がマスターピースとも言えるクラシックホラーのリメイクを成功させていく。
そう、この時期『オーメン』(76年)や『ゾンビ』(78年)といったホラー映画の名作が、軒並み製作25周年ないし30周年のアニバーサリーを迎え、それがリメイクの免罪符になったことも大きなポイントといっていい。こうした流れに、さらにはジャパン・ホラーの全米進出が波及した。『リング』や『呪怨』など、これまでのアメリカン・ホラーの概念にない恐怖映画の登場は、ジャンルを活性化させ、恐怖描写の底上げに寄与したのだ。2000年代、心配停止状態だったホラー映画は、深く大きく息を吹き返していくのである。

はたして『スクリーム4』は、この時代の趨勢を今度はどう切り刻むのか?
もちろん、この新作はかってホラー映画をズタズタにしてしまったように、11年間のホラー潮流を丸呑みし、痛烈な刃をズブリと突き立てる。ホラーの帝王として業界を席巻したウェス・クレイブン監督の、異論を許さぬ圧倒感が最大の殺傷力となって。
『スクリーム』シリーズの帰還は、それを観る我々以上に、多くのホラー映画たちを震え上がらせるのではないだろうか。